ドクター山内の漢方エッセイ

くらしに役立つ東洋医学
連載原稿 山内 浩






『はあと』 vol.7  夏の病気と夏ばて対策


日本では毎年六月中旬頃から梅雨入りし、梅雨時の過度の湿気(「湿邪」(しつじゃ)という)は皮膚をはじめ、筋肉や関節、胃腸などを冒します。
夏の暑邪も加わり、蒸し暑くなってきますと、発汗過多となり、汗も発散されにくく皮膚呼吸がうまくいかなくなって気分もわるくなってきます。
湿邪の筋肉や胃腸に対する影響としては、まず、からだや手足が重だるい、むくみ、などがあげられます。さらに、お腹がはる、便通がスッキリしない、軟便や下痢になる、食欲低下などがよく見られます。蒸し暑いからといって冷房や冷たいビール、ジュースなどの過飲でからだを冷やしすぎるとこれらの症状が悪化しやすいので注意しましょう。
漢方薬としては、急性の下痢、むくみには「五苓散」(ごれいさん)、「平胃散」(へいいさん)、食欲不振には「六君子湯」(りっくんしとう)、疲労倦怠、気力低下には「補中益気湯」(ほちゅうえっきとう)、お腹の冷えと痛みには「人参湯」(にんじんとう)、下痢、軟便をともなう夏かぜには「?香正気散」(かっこうしょうさん)などが用いられます。冷房病には上記のほか、「苓姜朮甘湯」(りょうけいじゅつかんとう)、「五積散」(ごしゃくさん)などが用いられます。
さて、7月下旬から梅雨明けとなります。
私自身、若い頃から夏にはたいへん弱い体質で、夏ばてしやすいのです。そこで夏ばて対策のひとつとしておすすめなのが、温浴と水浴を交互におこなう入浴法(温冷浴)なのです。一般には、普通に温浴後、冷水のシャワー(摂氏16−20度)を約1分間浴びればよいでしょう。
熱と寒の交互刺激によって皮膚の血管は拡張と収縮を繰り返して血行が良くなり、皮膚機能が改善して肌のつやも保たれます。さらに、全身の自律神経系のバランスが回復され、なんとも心がやすらぐ気分になります。疲労感が吹き飛んで、また、発汗過多もおさえられます。アトピーの患者さんにはとくにおすすめです。
夏ばて、夏負けには「清暑益気湯」(せいしょえっきとう)という漢方処方が有名ですが、風呂上がりに冷たい水をかぶるということも大いに有効です。また、夏の寝苦しい夜にも温冷浴は最適です。夏のうちから鍛錬しておくとカゼも引きにくくなるでしょう。